Chapter3 “時”を蘇らせる究極の技と叡智

フランク ミュラーの発明となる独自のコンプリケーション・ムーブメント/複雑な機構を持った腕時計の心臓部は、着想、設計、そして開発までのすべてのプロセスが自社の工房で行われています。ここでは、世界初の機構といえども、ごく簡明なアイディア・スケッチから始められ、設計図やプロトタイプの作製に移り、その後、度重なるテストを経てムーブメントの製作に至るまで、すべてが社内で一貫管理されています。

フランク ミュラーのアイディアは、毎年、このような流れを経ながら、新しいコンプリケーション・ムーブメントとして創造され、世界初の機構として登録されています。ムーブメントに拘るフランク ミュラーの豊かな創造力は群を抜き、唯一無二の存在と言えます。ジャントゥの工房から世に送り出される腕時計が、時の試練に耐え、至上の技術として世代から世代へと受け継がれるために、彼は、それぞれの機構とひとつひとつの腕時計のあらゆる部分に細心の注意を払うことも忘れません。

もちろん、この細部への気配りこそが時計師にとってもっとも重要な資質であり、彼の大切な基礎部分を支えていることを充分に理解しているからです。 フランク ミュラーの功績は、かつて懐中時計のために考案された複雑機構を腕時計に組み込んだことです。高い品質を誇るブランドとして、多くの複雑な機構を、できるだけ小さなムーブメントに組み込むことができるか、という崇高な目標のために絶え間のない挑戦を続けてきました。

彼の最大の偉業は、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダーという3つの複雑機構をもっとも精巧なマスター・コンプリケーションとして完成させ、ひとつの腕時計に搭載したことです。たとえば、トゥールビヨンの基本的な原理は、すでに1801年に発明されていましたが、それ以来、ほとんど進化することはありませんでした。
しかし、フランク ミュラーは、1983年、トゥールビヨンを構成する独自の画期的な方式を考案。この方式によって、トゥールビヨンの製作方法に目覚ましい進歩をもたらしたのです。『Master of Complications』、複雑時計の名匠。フランク ミュラーの工房で製作される腕時計の裏蓋には、この言葉が明確に刻み込まれています。

1986年、世界初の複雑時計を発表して以来、フランク ミュラーは、現在に至るまで、20年をわずかに越える間に、ワールドプレミアム・ウォッチと称えられる逸品はもちろんのこと、新しく特許を取得した世界的にも希少な機構を備えた作品を数多く送り出しています。『マスター・オブ・コンプリケーション』とは、また、時計創りの哲学でもあります。

それは、時を刻む機構を創造しながら、同時に、時の支配から解放されることをも意味します。過去の偉大なる伝統技術を継承しつつも、決してそこにとどまることなく、まったく新しい高度な技術力と美的な表現力を駆使することにより、21世紀にあっても腕時計をより進化させることに通じています。

現代ではもはや忘れ去られようとしている、本来の“時”の解釈を新たな表現で腕時計というキャンバスに描くことで、人と時の親密な関係を想起させ、“時の慈しみ”すら気づかせてくれます。裏蓋に刻まれた文字には、そんなフランク ミュラーの揺るぎない“時の哲学”が込められているのです。

Master of Complications